私の好きな「小径」
理事長 八尋 克三
今回は、わたくしの心休まる「小径」を紹介します。坪庭から左側に行くと、そこは本館との連絡路になっていて、そこを過ぎると狭いながらも広場があり、本館の階段とエレベーターホールに突き当たります。 このおよそ30メートルの通路と空間が、今回紹介する私の好きな「小径」です。
玄関から、この「小径」を歩いていくと2間ほどの連絡路があり、花瓶を並べるのに程好い出窓が左右にあります。ここには四季折々の花が活けてあり、いつも花言葉が紹介されています。今週は上品なピンク色の「トルコキキョウ」ですが、そこには「やさしい人格」という花言葉が添えられています。花言葉に続いて「見ているとロマンティックな気分になるピンク。ピンクが好きな人は゛常に希望や夢を持ち続けているそうです゛」とも言い添えてあります。花の通路を過ぎると、その先は幾分広い空間になっており、ここには、3台の自販機と、いくつかの椅子やテーブルが置いてあります。待ち時間を過ごしたり、軽食をつまんだり、幾人かで談笑する情景を見かけます。広場の丁度真ん中あたり左側の通路を行くと検診室、エコーセンター、ミキシングルーム、外来化学療法室そして訪問看護ステーションがあり、反対の右に行くと管理部門に繋がっています。まっすぐは病棟への階段とエレベーターホールなので、ここは患者さんやその家族そしてスタッフが何度でも行き来する、病院で一番人通りが多い場所なのです。椅子の一つに座って広場を眺めてみると、左壁面いっぱいに、高校の先輩K氏夫人の古今和歌集の草書があり、和の雰囲気を出しています。以前には、同夫人の万葉集の一句、その後歌人佐藤春夫の「人を恋ふる詩」が掛かっていました。右側の広い壁面には、重い病を得て入院治療を続けているMさんの絵が5,6枚並んでいます。そこにはご本人から、多くの方に絵をみてもらえることで、気持ちが前向きになったという言葉が添えられています。Mさんにとって、苦しい療養の日々の励みや慰めになっているとお聞きしています。
この壁には当院外科A医師が旅先で撮った情感ある風景やK看護師の力作ヒマワリの写真集、また、この小径を演出している医局秘書Mさん撮影の風景や人物、そして神宮でご開業のT先生からお送りいただいた玄人はだしの熱帯魚や宮崎の冬の景色の写真が季節の折々に壁面を飾っています。
患者さんからこの「小径」の花や作品に癒されたという声も寄せられるようにもなりました。ある患者さんが、皆さんに見ていただきたいと自作の押し花作品(ひまわり)を持ってこられたので披露させてもらっています。
私は、外来診察に向かう時に、この「小径」を通りながら、気分を整えることが習慣になりました。時には私の好きな「鈴懸の径」(友と語らん♪ 鈴懸の径♪・・・・やさしの小径♪・・夢はかえるよ 鈴懸の径♪)を思わず口ずさみたくなることがあります。
人はいつも万全の体調でいることはできません。気分がすぐれない時があります。そんな時には、音楽でも本でも何でもいいのですが、癒してくれるそれぞれの「小径」を身近に見つけておきたいものです
▶ 理事長 八尋 克三 【胃・腸・膵臓・胆石症】
昭和46年 鹿児島大学医学部卒
日本外科学会指導医
日本消化器病学会専門医
日本消化器外科学会会員
日本肝胆膵外科学会会員
日本臨床外科学会会員